2019年09月20日

博物館の学芸員は顔が見えるほうがいいか

みなさんこんにちは学芸員Aです。

博物館の学芸員は顔が見えるほうがいいか、それともカオナシのほうがいいか。これは結構真面目な話です。

個人的経験では、人前で解説させていただいたり、刊行物を出版したときによく思います。誰が話し、誰が書いたのかは、聞いたり読んだりする人にとっては興味があることだし、場合によっては必要だと思うからです。

■組織と職員

日本の行政機関における対外的な事務体制の単位は「組織」であって「個人」でないのが普通です。
組織的な決定事項について責任を負うのは組織だからでしょう。逆に言えば個人的な決定事項はありえない。民間組織も含めて、社会的な問題としてよくいわれる「責任の所在が分からない」のはこのためかもしれません。外部からみるとあまりいい感じではないですが、でも働く市民の個々人の立場に立てばありがたいものかもしれません。

いい・わるいの両面があって一概に考えるのは難しいところです。ただ、組織で行うのが普通といっても、実際のところ、ミュージアムで個人名を出さないようにする規則はありません。たぶん行政的に馴染みがない、というところでしょう。

■学芸員の業務って行政ではちょっと異質
学芸員の業務内容は、各学芸員個人の調査研究の上に成り立っていることが実際多く、業務内での完結性の高い職掌との違いが大きいことがある気がします。この範囲をどう見るかも影響するのかもしれません。枚挙にいとまがありませんが、例えば博物館にいる個人が学会賞を受賞したとき、当該博物館がプレスリリースをする・しないの判断はわかれます。職務的に行った研究でも個人研究でも、です。
前の記事で、博物館活動奨励賞を伊丹市昆虫館さんの3名の学芸員が受賞した件を紹介しました。このとき、伊丹市さんはプレスリリースをしました。でもそれよりも前に受賞した小樽市総合博物館さんは学芸員が教育長報告する場にメディアを招いていました。小樽市さんの公表方法は、内部の報告会だけど取材してもいいよ、という形であり、これはなかなか考えたと思いました。もちろん公表しない自治体もあります。対応はそれぞれなわけです。いずれも業務において行っていたことについて個人名で受賞したというところが考えどころです。

■美術手帖

美術業界ではこの問題が取り沙汰されることが多いようで、「美術手帖」のウェブサイトでもこのことが記事になっていました。

美術手帖 2019.5.15
学芸員は名前が出せない? 美術館の(奇妙な)現状を探る

2019-09-20_学芸員の名前1.jpg

「美術手帖」は、美術業界では個人名を出すほうがいいのではないか、と考えています。
欧米の美術館の例が挙げられていました。欧米をひとつつにまとめることもできないと思いますが、学芸員の基本的な地位の高さ(大学・研究機関の所属と同じ)や、学芸員を含むスタッフそのものが組織の貴重なリソース(資源)や誇るべき財産とする考え、もっと広く見れば個人を尊重する社会的風土が背景にあるかと思います。したがって、展示のキュレーションをするということ自体が業績の一部となりますし、またフリーランスのキュレーターの存在も一般的です。その意味では、社会や組織における個人をどうとらえるかによって、個人名を出すべきかどうかが変わる可能性があるといえるかもしれません。
日本の美術館でも、熊本市現代美術館や福岡市美術館のホームページでは学芸員の紹介が掲載されています(下記リンク)。消費者からすれば、何ら困るものではなさそうですし、むしろ地元の博物館にイイ学芸員がいれば自慢できたりして好意的に見ることもあるかもしれません。

 熊本市現代美術館 スタッフ紹介
 福岡市美術館 学芸員等スタッフ紹介

■滋賀県立琵琶湖博物館で

なにも美術業界だけが「顔出し」ムードというわけではありません。滋賀県立琵琶湖博物館では、展示室間の通路の壁面に、ずら〜〜〜っと学芸員の写真つきプロフィールや博物館での活動内容が掲げられていました。個人的にはとても面白くて、自分のご専門と職務内容とが一致している人もいれば、ちょっとずれている人もいたりして、目を引きました。もし博物館に訊きたいことがある時はこれをみれば何について答えてくれそうかどうかもわかるかなと思ったりして、親近感がわいたものです。

■みなさんはどうですか

最終的な結論は見つかりそうもありませんが、行政機関としてのミュージアムにとって重要なことは、どうすることがより「公共の利益」にかなうかに帰結するだろうと思います。「顔出し」することで何か困ることがあるのかどうか、またどんないいことがあるのか。これを考えることは博物館や学芸員が公共に果たす役割について考えることにつながります。結構真面目な話です。

みなさんの博物館はどのようにしているでしょうか。また、みなさんにとって学芸員の顔や名前が見えるほうがいいでしょうか。


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posted by 十日町市博物館 at 12:13| Comment(0) | 日記
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