2018年06月20日

火起し研修

みなさんこんにちは学芸員Aです。
新潟県立歴史博物館さんに、戦う学芸員Aさんを訪ねました。火起こしを教えていただくためです。

道具の解説から、実演、沢山の子どもに体験させるときのコツなど、沢山の経験に基づいたお話を伺いながら、実際に火起しをさせてもらいました。

2018-06-20_hiokosikensyu1.jpg

2度ほどやってみて、どっちも火が付きました。よかったよかった。といっても結構時間がかかるもので、そして非常に疲れました。持続的に強い力が要るのです。手の平に細長い水膨れができました。「火きり杵ズレ」です。3度目はもう勘弁、という気分になりました。

でも火起しにもちょっとした科学があることもわかったので、ここに書き留めて後に役立てたいと思います。

【火起こしの道具】
火きり杵(きね)…棒。ウツギの枝を使います。
火きり臼(うす)…貫通しない窪みをつけ、側面からV字の切れ込みを入れます。切れ込みは窪みに達するくらいにします。
ぜんまいの綿…火種を大きくする着火材
細い麻紐…同上 その2


【工程】
杵の先端を臼の窪みに押し付け、両手で回転させて摩擦します。すると、臼が削れて焦げた粉が出て切れ込みからこぼれ落ち、この粉が火種になります。
火種をぜんまいの綿の上に落し、麻紐でくるんで、外側から空気を吹き入れます。いずれボワっと燃えます。

【火起しの科学】
「なぜ火がつくのか」考えていました。じ〜〜〜っと観察していて、分かったことがあります。

2018-06-20_hiokosikenkyu2.jpg

@ウツギのアドバンテージは回しやすい径と断面積の少なさ
ウツギを使うのは、両手で回転させやすい断面径を確保することと、臼と接する面積を減らすことを両立させることにあるでしょう。面積が大きいと力が分散されますから、中心部のないウツギで面積当たりの圧力を高くし、摩擦熱が生じやすいようにしているのです。実際、中の詰まった(うつろになってない)太い杵を使ったら煙すら出ませんでした。驚きの科学知です。
ナショジオにこんな記事もありました。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140916/415627/


A火種ができるタイミングは、積み上がった粉が窪みに達したとき
力が要るのは、粉をたくさん出すためでもあります。そして、かかってる時間は、粉がV字にたまって窪みに達するまで粉を蓄積させる時間だろうと思いました。

もしそうだとすると、この時間はV字空間の高さを底上げしてあげれば短縮できると予想できます。臼の板を薄いものにするとか、V字空間に台を差し込むとか、あらかじめ粉をためておくとか、色んな方法が考えられますので今度試してみたいと思います。

B火種は窪みのなかの最も熱いところに接している部分にできる
見ている限り、窪みの縁よりは下、という印象でした。詳しくは分かりませんでしたが、実験の結果がここにのっていました。
https://www.shizecon.net/award/detail.html?id=222
要するに、窪みの中で最も温度が高くなるのは中心部で、そこに火種ができる、という結論のようです。着火温度は230度。だからV字切れ込みは窪みの中心部に達している必要があるそうで、達していないと付かないのだとか。

今回の研修で使った火きり臼のなかでは、この窪み↓が中心部近くまで切れ込みが届いているので、いい感じかもしれません。

2018-06-20_hiokoshikenkyu4.jpg

ただ、ウツギの場合は中心部がないため高温になるのは周縁部になるだろうとおもいます。だから、V字はウツギと窪みとの接面に達していればいいことになり、その接面がもっとも火種を作りやすい部分ということになるはずです。戦う学芸員Tさんも杵の太さとV字の深さとには相性があるとおっしゃってまして、きっとこのことなのだと思いました(あとで)。

2018-06-20_hiokoshikenkyu3.jpg

でも、上の画像を見ると、V字の切れ込みが窪みの上のほうにしか達していないことがわかります。これでは最も熱くなる部分が窪みの中にあって粉が触れられないので、火種になりにくいことがわかります。どーりで・・・・・!

さて、戦う学芸員Tさんによると、火起こし世界記録があるそうですね。


5秒。


「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


あまりの驚きに、
戦う学芸員Tさんの最高記録を忘れてしまいました。すみません。でもすごい記録だったことだけは憶えています、たぶん。

このあとは、館の縄文展示室を詳細に解説していただきました。やっぱりジオラマっていいですね。臨場感が抜群なので、そこにいるだけである種の感動を味わえますし、よく見ればその構成がいろんなことを語りかけているのがわかります。

「何百年も前の作品と対話し、感動し、その時代を想像することができる。それが教養。」といった、マリ出身の京都精華大学長さんのインタヴュー記事を思い出しました。

asahi.com


何百年前の実物作品でなくとも、再現することによって感動や想像を引き起こすことがあるのです。
とても勉強になる素晴らしい体験でした。ありがとうございました。


学芸員A
posted by 十日町市博物館 at 11:37| Comment(0) | 日記
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