2017年09月08日

「高田茂とマリア観音」伝説

みなさんこんにちは、学芸員Aです。

松之山の観光マップを調べていたらこんな名所が書かれていました。

マリア観音

そういえば前に、松之山郷民俗資料館へ行った帰り道、

道標に誘われて行った松陰寺でそれを拝見しました。

実際にはお堂が暗くてよく見えなかったので、行っただけともいえます。

いまちょっと検索してみたら沢山の記事がヒットしまして、

ざっくり言うと総じてこんなことが書いてあります。

1 松陰寺の観音様はマリア観音である
2 松之山には多くのマリア観音がある
3 マリア観音とはカクレ(隠れ)キリシタンの信仰に関わるものである
4 マリア観音の発見者は元立教大学総長の高田茂である
5 高田茂の著書として、以下の2件がある
 (1)石のマリア観音耶蘇仏の研究
 (2)聖母マリア観音:御姿と伝承

また、新潟教会の司教さんがマリア観音を見るため、

このお寺を訪れたこともあるとか。

ところが。

いろんな記事の中に気になる言葉がひとつ入っていました。

「高田先生がマリア観音であることを立証した」

・・・立証した、と。

妙な言い方です。人文系では使わない言葉です。解釈学だからです。

普通は、「〜の可能性が極めて高いと指摘」とか、そういう感じです。

もやもやした気持ちのまま、さらに記事を見ていると、

あるサイトでこういう言及がありました。



「歴代立教大学総長に

 高田茂という人はいません。」



きた。きました。

ワタクシの中のコナン君が目覚めた瞬間です。

で、検索してみると、確かにいませんでした。イイかんじです。

「総長」は第2代から現在の19代まで公表されていまして、

高田さんという方はいませんでした。

次に学術論文検索を行いました。

結果、

論文1本もなし。


上記の本は、自費出版のようです。

なかなか直接的な証拠が見つからないのが難ですが、

ひとつ言える確かなことは、この方が経歴を詐称したということ。

それと、マリア観音と「立証」されたという石像は、

おそらくは全国にある「子育地蔵」あるいは「子安地蔵」の一種

だろうということです。みなさんも画像検索してみてください。

いっぱいあります。

それから歴史の検証にはクロスチェックといいますか、多方面から同じ事実に行き当たることができるかどうかが大事になります。

近世史なら、まず文書、口伝、その他の物的証拠が必要になるでしょう。

が、松之山にカクレキリシタンが居たことを示すほかの証拠は今の所全くありません。

子安観音がマリア観音に似ていることだけを拠り所にしてカクレキリシタンがいたというのは、単なる思いつきを口にしたのと同じです。

「真実はひとつ!犯人はおまえだ!


ビシ!

犯人じゃないですけどね。単なる思いつきを言っただけですから。表現の自由です。でも経歴詐称は良くないです。


ただ、ですね。

簡単に指弾するのもどうか、というのもあります。

考えてもみてください。

平家の落人、海底に沈んだ都市、源義経→チンギスハン、

ノストラダムスの大予言、ツチノコなどなど、

この手の話は、挙げ出したら切りがないくらいたくさんあります。

それはそれで面白いからいい というのは、

悪いばかりではありません。

本気にしてしまう人がいるのは文化財部局的に困ったものなのですが、

ツチノコやカッパの伝説で町おこししているところもあり、

そういう脈絡では面白いことなのかもしれません。

現状ではあくまでオカルトの範疇であることを自覚していれば、それで良いとおもいます。

だいたい、かくいうワタクシもですね、こんなことしてます。



学術論文検索で「学芸員A」を検索したら、

1本もヒットしませんでした。


追記
子安観音が多い事実があるとすれば、この地域に特別な習俗や考え方があったことを示すのかもしれません。オカルトに覆われてその事実がなかったかのようになるとすれば、それはとても大変残念なことです。

学芸員A
posted by 十日町市博物館 at 17:31| Comment(0) | 日記
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